現在行っている主な研究
Current Study
国際総合研究機構 生体計測研究所 で行っている主な研究を紹介します(2008年6月26日現在)。
- ヒーリングの生体組織に与える効果量の測定法の研究
- ヒーリング作用の仕組みの研究
- 加齢とヒーリング能力
- 推測(透視条件)における脳血流変化の研究
- 自閉症患者に対する遠隔ヒーリング効果の研究
- 予感実験
- 異文化における顔表情認知過程の差異研究
- 緑の心理学の研究
- 太極拳の心理生理学的研究
- ブラジルの宗教儀式のフィールドRNG実験
- サイ能力誘発訓練
1995年から2000年の主な研究は、旧 生体放射研究室の プロジェクト報告 に掲載しています。
2000年から2003年の研究内容の紹介ページはありません。
極微弱光の計測装置を用い、比較的小さな生体組織に対する非接触ヒーリングの効果を測定する。測定可能な生体組織は数cmから10数cm程度の大きさである。 生体内で起こっている化学反応は多種多様であるが、中には、可視光を発する反応もある。生体が発する極微弱の可視光を極微弱生物光、あるいはバイオフォトン(biophoton)という。バイオフォトンは非常に微弱であるため、肉眼でこれを見ることはできない。バイオフォトンは主に活性酸素から発せられる。
当研究所は、2006年、手かざしや祈りなどの非接触ヒーリングの作用を、極微弱生物光で定量評価する方法の開発に成功した(原著論文は文献1)。 イメージインテンシファイア(I.I.)内蔵の超高感度カメラにて(波長域: 280-650nm)、植物切片(白いぼきゅうり)の試料対(実験試料と対照試料)を18時間測定し、実験試料から生じる生物光の発光強度を対照試料の発光強度と比較した。 測定は、実験試料に5分から30分間ヒーリングするヒーリング群、40℃の熱源に30分間さらす熱処理群、手の影の代わりに遮光版を置く遮光処理群、遮光と熱処理を行う熱・遮光処理群、さらに何も処理を行わなずに室内光に30分暴露する暴露群(無処理群)、について行った。 実験に使う試料の作成法は、上の図の通りである。厚さ2cmに切り出したきゅうりを中央から切り開くと、左右対称だが、同一形状、同一の大きさ、同一構造の面をもつ試料が2つできる。この2つの試料の一方を対照試料、他方を実験試料とし、計4対の試料対を作成する。発光強度は試料対ごと比較する。 結果、ヒーリング群では実験試料と対照試料の発光強度に有意差があったが(p = 6.5×10-7, two tails, Wilcoxon signed-rank test)、他の群では差がなかった。また、発光強度の時間変化も、ヒーリング群のみ、他の2群と異なっていた。すなわち、手かざしの効果は手の熱や影によるものではない。 発光強度の差だけでは、定量評価の指標として使いにくい。そこで、実験試料と対照試料の発光強度比の自然対数(J値)を効果量の指標として用いる。 その結果、無処理群と熱処理群は誤差の範囲でJ=0だったが、ヒーリング群のみJ値は0から離れていた。下のグラフに、J値の平均値とその95%信頼区間を示す。
植物切片にヒーリングを行うこの方法の長所は、長時間測定が可能、暗示の要素が入らない、実験試料が安価で供給も安定している、被験者の負担が軽い、これまでは非常に能力の高いヒーラーしか成功しない実験系が多かったが、本測定法は初心者は初心者なりの、中堅は中堅なりの値が得られる、という点が挙げられる。 J値の導入によって、非接触ヒーリング作用の定量的評価、すなわちヒーラーの能力の定量評価が可能となった。今のところ、ヒーラーの能力を、J値が0.2以上でA級、J値が0.2〜0.1なら中堅以上(B級)、0.1未満ならN級(初心者級)とに、分けることができる。 なお、今回開発した方法でヒーリング能力が認められたとしても、そのことから直ちに「人を癒す能力がある」とは言えない。あくまで実験試料の発光強度が変化したというだけである。しかし、少なくとも、 と考えている。 文献
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この研究は、上記の測定法を使ってヒーリング作用の機序を解明しようという試みである。 下の図は、非接触ヒーリングを行ったキュウリ(実験試料 E )と行わなかったキュウリ(対照試料 C )の発光強度が、時間とともにどのように変化するか示したものである。 ![]() 左:実験試料Eと対照試料Cの発光強度と標準偏差 右:発光強度の差と95%信頼区間 このグラフから明らかなように、最初の4時間(Phase I:立ち上がり期)は実験試料と対照試料の発光強度に差がなく、5時間目以降(Phase II:最大期)に顕著な差が生じる。 ヒーリングは立ち上がり期に発光する化学反応系には影響を及ぼさず、最大期(Phase II)に発光する化学反応系にのみ影響する。言い換えると、ヒーリングは特定の化学反応系にのみ作用し、何にでも作用するわけではないので、適当な阻害剤でヒーリングの作用する反応を阻害すれば、ヒーリングの効力を容易に無効化できる。 では、切断したキュウリのバイオフォトンは、どのような反応から生じるのだろうか? 発光する可能性のある反応系は多数存在すると思われるが、現在、次の3つの反応系に絞って検討を進めている。 1) ビタミンC(アスコルビン酸)の酸化反応 2) 緑の香りの生合成反応 3) 緑の香りに誘導される別系統の生体防御反応 1,2)については、アスコルビン酸酸化酵素(ASOD)や脂質過酸化酵素(LOX)、α-リノレン酸、リノール酸をキュウリに添加すると発光強度が上がることから、実際に発光することが確認できたが、どの時間帯でどの反応系が優勢であるかは、まだ不明である。 また、3番目の反応系は存在が予想されるものの、まだ反応の研究そのものが進んでいないため、発光の有無を確認できていない。 ![]() ![]() 左はASODを添加した場合、右はLOXを添加した場合(相対強度表示)。 反応系の研究を進めると同時に、引き続き、ヒーリングと関係がありそうな既知の物理刺激によって、ヒーリングと同じような発光強度の変化が起こるかどうかも調べている。 現在までに、手の熱の代わりに40℃の熱源にさらしてみたり(前項参照)、市販の健康磁気器(静磁場、交番磁場、パルス磁場)を使ってキュウリを刺激してみたが、ヒーリングの場合と似た発光強度の変化は観察されていない。今後も、さまざまな物理刺激を試す予定である。 文献
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この研究は、上記のバイオフォトン(極微弱生物光)を用いた非接触ヒーリング作用の標準評価法の応用研究である。 この研究では、インターネットで実験協力者を募集し、その非接触ヒーリング能力を測定した。また、同時に2種の質問紙を使って、合計186項目の質問紙調査を行い、ヒーリング能力に関係する要素を調べた。非接触ヒーリングとは、いわゆる手かざしである。手かざしは時代によってさまざまな名称が使われ、最近ではスピリチュアルヒーリングという名前が流行っている。 募集したヒーラーは、初心者:実践経験3年未満または施術例100人未満、中堅・ベテラン:実践経験3年以上または施術例100人以上、の2条件で、流派不問で募集。結果として、気功、神道系手かざし、西野式呼吸法、氣圧療法、レイキ、浄霊、クォンタム・タッチ、TDEなど、いろいろな実践経験をもつヒーラーが集まった。 この研究ではわかったことは多いが、重要なのは、ヒーリング能力がヒーラーの年齢と熟練度の関数で表せることと、ヒーリングの生物学的仮説である(詳細は文献1参照)。 ヒーリング能力の重回帰式 ヒーリング効果の大きさ(ヒーリング能力)であるJ値は、年齢関数A(x)と初心者・ベテラン度関数B(y)の線形結合でよく近似できる。 ここで β0 は定数、β1, β2 は偏回帰係数である。 流派点は、ヒーラーの学んだ手法・流派の種類の数を得点化したもの。初心者はいろいろなものに手を出すので流派点が高くなるが、ベテランになると1つの流派に専念するため流派点が低くなる。 下のグラフに、J値の理論値と実測値を示す。理論と実際とは非常によく一致している。すなわち、ヒーリング能力は、ヒーラーの年齢と熟練度で決まる。
この測定法で測定できるのは、痛みを抑制するヒーリング能力と考えられた。ヒーラーの体調が良いときには、ヒーリング効果も大きい。しかし、意識状態やスピリチュアルな状態の良さ、対象物とつながった感じ、対象物の生命力の感受、成功感、あるいはヒーリングに使った意識集中・視覚化などの意識技法の種類や使用程度は、ヒーリング効果と関係がなかった。また、系統の異なる手法や流派を学ぶと、かえってヒーリング能力を抑制してしまうこともわかった。その他、ヒーラーの性格特性では、慎重な人より、そそっかしい人の方が能力が高かった。 スピリチュアルヒーリングの生物学的仮説 この研究の実験結果は、次のような仮説を考えると、うまく説明できる。この仮説は、なぜ多くの人が「自分はヒーリング能力をもっている」「簡単な訓練で誰でも能力を身につけられる」と主張するのか?という疑問にも答えることができる。 仮説 (1) 加齢によって生ずる痛みを抑制するために、痛み抑制の自己ヒーリング能力が向上する。 (2) 他者の痛みを抑制する非接触ヒーリングは、痛み抑制の自己ヒーリング能力を他者に向けて転用したものである。 しばしばヒーリングは、高次の意識(状態)が重要であると主張されているが、実際には、意識よりも肉体の方がずっと重要である。意識は能力を制御するのに必要だが、ヒーリング能力の源泉は肉体にあると考えている。 文献
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推測は、サイ−特に透視−と密接な関連をもつ重要な活動と考えられる。もし、推測中の脳の活動部位がわかれば、サイに関係する生理機構の詳細を理解できるに違いない。たとえば、推測中に脳の前頭前野が賦活しているというfMRI(機能的磁気共鳴画像診断法)による研究がある(Eliottら、1999)。大変興味深いことに、前頭前野は、いわゆる「第3の眼」の場所に対応している。 我々も、Eliottら以前に、透視能力者のfMRI実験を行い、脳の前頭前野が賦活する研究結果を得ていたが、被験者がfMRIを拒否したので以降の研究を断念せざるを得なかった。現在、我々はfMRIに代えて近赤外分光血流計(fNIRS: functional near infrared spectorscopy)による研究を行っている。 fNIRSは、日本で開発が進んでいる最も新しい非侵襲計測法である。fNIRSは、脳活動を血中の脱酸素ヘモグロビンと酸素ヘモグロビンの流量変化で測定する。頭皮近くの大脳皮質しか測れず(頭皮から深さ2−3cm)、空間分解能も2−3cmであるが、時間分解能に優れ100msで測定できる。また、脳波測定と同じくらい被験者負担が少ないという利点もあり、超能力者や感受性の高い敏感な被験者に適した手法である。 現在までの研究状況 2001年から現在まで、一般人および透視能力者による実験を行っている。これまでの研究から、一般人が隠された図形を推測するとき(強制選択・透視条件)、左右の側頭葉で時々、大きな血流増加が起こり、その血流変化と同時に「図形のイメージが明瞭に浮かんだ」という自覚をもつことがわかった。 この血流変化は60秒〜80秒ほど続くもので、慣れると、血流増加によるわずかな意識状態の変化を自覚することができる。我々は、これらを突発的血流変化(spontanaeous blood flow change: SBFC)、および注意(意識)の短時高活性化状態(instantaneous highly activated states of awareness)と呼んでいる。なお、この現象は、側頭葉だけでなく、前頭前野でも起こる。
当初、この現象が透視課題の成功に関連するのではないかと考えて実験を進めたが、どうやら直接的な関係はなさそうである。 透視能力者の測定例はまだ少ないが、スター級の透視能力者は、一般人の透視と違い、側頭葉の血流増加はあまり見られず、前頭前野を中心に顕著な血流増加が起こることがわかった(実際の動画:再生には Windows Media Player が必要です)。 本研究では、超能力者が自己の意識経験を語った文献や、中国で開発された透視能力の訓練法を参考に、透視能力者が行っていると推定される意識活動をまねするよう一般人に指示した。しかし、実際には、一般人が透視をするつもりで努力しているときと、優れた透視能力者が透視しているときとで、脳の使い方が大きく異なるといえる。 今後も引き続き、優れた透視能力者、遠隔視能力者など、様々な能力者と一般人との比較を通じて、透視能力、およびその訓練法の研究を進めていく。 主な文献
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本研究は、2005年5月から行っている国際共同研究であり、参加国はブラジル・チリ・ペルー・イギリス・日本の5カ国である。 対象患者はブラジル南部の病院で治療を受けている自閉症患者10名で、遠隔ヒーリングを受ける実験群(5名)と比較のための対照群(5名)とに分けられた。ヒーラーはブラジル・チリ・ペルー・日本から合計10名が参加し、内、日本人ヒーラーは3名であった。日本とブラジルは地球の真裏の位置関係にあり、地球上で実験可能な最長距離である。実験は2重盲検法で行われた。 研究目的 ヒーラーが遠隔地の自閉症患者群に影響を与えることができたかどうかを、患者の治療効果の程度で確認する。 患者群 患者は合併症がなく、病状が重く、かつ安定している患者が選ばれた。ヒーリング実験期間中も、通常の治療が継続して行われた。 ヒーラーへの実験指示 各ヒーラーは1日のうちの任意の時刻に任意の時間、郵送された写真の患者1名に遠隔ヒーリングを行った。写真はブラジルから封筒に密封された状態で日本に届き、日本側実験者が密封状態のままヒーラーに発送した。写真はヒーリング終了後、ヒーラーが封筒に密封し、ヒーリング実施記録とともに日本側実験者に返送した。1対象患者につき5日間のヒーリングを行った。対象患者の写真は、各5日間のセッションごとに郵送・回収した。 10名のヒーラーが5人の患者を、5日間ずつローテンションでヒーリングした。これはヒーラーの能力のばらつきを均等化するためである。 ![]() 治療効果の評価 評価は医療従事者による自閉症児評価尺度(CARS)での評定、ならびに家族と教師による評定で、ヒーリングの実施前、実施後に行われた。 現在までの研究状況 ヒーリングは、2005年11月から12月にかけて、1患者につき2名のヒーラーが5日ずつ(計5患者、計25日間)実施した。 結果、実験群では施術の前後でCARS得点のわずかな低下があったが、患者によっては施術前のCARS評定から施術後の評定の間に治療薬の変更があり、これが症状の改善に有利に作用したと考えられること、また新学期になって教師が代わったため、施術前後の教師による評定の信頼性が疑わしくなったことなど、実験上の問題が見つかった。 この予備的な研究から明らかになった点を改善し、今後、さらに被験者数を増やして実験することを検討している。 文献
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通常の心理・生理実験は被験者に刺激を与えた後に起こる心理・生理反応を研究する。現在、最も新しい予知の実験は、通常の心理・生理実験を予知領域に拡大するようデザインされている。刺激呈示後に反応が起こるような実験なら、刺激に先行する反応(予知的反応)も観察可能という考え方である。言い換えると、刺激に対する反応が観察されないような実験では、刺激に対する先行反応(予知的反応)も観察できないという考えである。 この新しいタイプの予知研究は、Klintman(1983)の認知的不協和の研究が最初である。Klintmanの実験は、次のようなものであった。 まず、第1課題は、被験者に青・赤などの色カードが示され、その色の名前を答える。続いて、第2課題では、色の名前の単語が示され、それを読み上げることが課せられるが、このとき、単語は色文字で書かれており、例えば、赤色で「赤」と書かれている場合(認知的に協和)と、青色で「赤」と書かれている場合(認知的に不協和)とがある。第2課題の被験者の反応速度は、認知的協和のときには速く、認知的不協和のときは遅い。しかし、同時にまたKlintmanは、第1課題の反応速度も、認知的協和の場合には速く、認知的不協和の場合には遅くなっていることを見いだした。すなわち、時間的に後から課せられる課題の違いが、先行する第1課題の反応速度に影響したのである。 この研究の重要な点は、通常の認知科学の実験でも、実験デザインを工夫すれば予知効果が検出できることを示した事である。 1990年代に入ると、Radin (1997)が、刺激的な画像と穏やかな画像を見たときの生理反応の違いを分析する予知実験を行った。穏やかな画像のときに比べ、刺激的な画像を見たときは、驚き・恐怖によって緊張・発汗が起こるので、皮膚電気活動や心拍数が顕著に増大する。Radinは、画像が被験者に示される数秒前から生理変化の違いが生じていると報告した。
Radinの実験は予感実験(presentimentの実験)と呼ばれ、その後、各国で追試や画像刺激を音刺激に変えた実験が行われている。 予知効果の解釈として、次のようなものがある。 1) 意識は「現在」を中心に時間的に前後(未来と過去)に少し染みだしている。 2) 時間を遡る因果的影響が観察された。すなわち、原因が「現在」にあり、その結果が「未来」の方向に出現する場合(通常の因果関係)と、「過去」の方向に出現する場合(逆方向の因果関係)があると解釈する。 当研究所の研究は基礎的段階である。画像刺激(International Affective Picture System: IAPS)は文化圏によってそもそも反応が違うので、なかなか日本人は思ったような反応を示してくれない。日本人向けの実験デザインを模索している。 文献
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本研究は、文部科学省の科学研究費補助金(一般基盤C)によって実施した共同研究である。なお、この研究自体は超心理学の研究ではないが、超能力研究への応用も試みた。 研究目的 対人コミュニケーションは、大きく分類すると言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションとに分けられる。非言語コミュニケーションには、顔表情や、姿勢、態度、視線、身振りなどが含まれ、コミュニケーションの受け手は、言語発話の内容と共に、非言語的な相手の出すシグナルから、相手の意図を読み取り、それに対する受け手自身の意図や情動を適切に表現することでコミュニケーションが成立する。 顔表情は、怒り、不安、驚き、軽蔑といった不快情動と、喜び、楽しさ、嬉しさといった快情動の表出と考えられるが、2002年のDienerの研究では、欧米人は「快情動」である喜びや楽しさと、怒り、驚き、不安などの「不快情動」と混在することはないが、日本を含むアジア圏では、対立する2つの情動が混在することが示された。Dienerは、対立する情動が独立している文化圏をdialectical、包含しうる文化圏をnon-dialecticalな文化圏とした。顔表情が情動の表出である以上、2つの文化圏での顔表情の表出にもdialecticとnon-dialecticalな差異が生じることになる。 本研究では、日本人大学生、アジア圏からの留学生を対象として、喜び、驚き、恐れ、怒り、嫌悪、軽蔑の6つの明確な顔表情と、対立する情動を組み合わせた表情を刺激材料としたとき、対象者がどのように認知されるかを調べた。 方 法 ディスプレイに呈示された顔表情に対し、それがどのような情動を表出したものかを被験者に回答させる。このとき、被験者の情動変化を近赤外分光血流計による脳血流の変化で測定した。また、文化圏による顔表情認知の差異を調べた。 現在までの研究状況 日本人の場合は課題負荷が小さかったが、日本人と同じNon-dialectical文化圏の中国人には日本人のあいまい表情の認知は課題負荷が大きく、脳血流の増大が顕著であった。 また、同じ刺激写真をブラジル人に呈示した場合、各情動表情に違いがあることはわかっても、それを「何と呼ぶか」という判断の仕方が異なっていることが示唆された。 さらに、この実験を、いわゆるスター級の超能力者に行った結果、念力課題を遂行しているときと、顔表情認知課題を遂行しているときで、ほぼ共通の部位で脳血流の増加が顕著になることがわかった。非常に興味深い結果であるが、これがこの超能力者に固有の現象であるのか、それとも念力課題遂行に伴う特徴的な現象なのかは今のところ不明である。 文 献
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本研究は、2005年4月より実施している共同研究である。 緑の心理学(グリーン・サイコロジー)は、環境と人間との相互作用を重視する心理学として提唱する新しい概念である。 研究は初期段階だが、たとえば、ストレス課題を与えた後に、都市環境、あるいは自然環境の動画を視聴させ、ストレス回復度や回復過程の違いを心理生理学的な手法を用いて調べている。 また、基礎実験の1つとして、観葉植物(ポトス)に電極を付け、種々の刺激と植物の電気特性変化との関係を調べている。刺激は、音楽(クラシック、ロック、ポップス)や、霧吹きによる湿度変化などである。これまでのところ、クラシックよりもロック・ポップスの方が活発な電気活動を誘発することがわかっている。 なお、バクスター効果と呼ばれる、人の意識変化に対応する植物の電気特性変化にも関心をもっている。バクスター効果は、当初、植物が人間の意識をテレパシーのように読み取ることで起こると考えられたが、現在では、バクスター効果は空気中の湿度変化や電場変化に対する植物の反応を誤解したものとされている。 本研究でも、植物が湿度変化に敏感なこと、また、人間の会話(という音刺激)にも反応するので、あたかも植物が人間の意識に反応したように見えることを確認している。人の超能力が他の生物に影響し得ることを考えると、原理的にバクスター効果の存在を否定することはできない。しかし、純粋にその効果だけを測定するには、植物体およびその組織の生体リズムの同定や、光・温度・音などの環境刺激の研究が必要である。 文 献
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大学・企業の研究者とともに、太極拳訓練の心理生理学的研究を行っている。 健康法としての太極拳は、すでに様々な測定が行われているが、本研究では、これまであまり測定されてこなかった要素を中心にしている。測定項目は、脳波、近赤外分光血流計(fNIRS)による脳血流変化、皮膚電気活動、指尖脈波、クロモグラニンA、対光瞳孔反応などである。 研究はまだ初期段階であるが、fNIRSの測定で、太極拳実施中に、いわゆる「第3の眼」に相当する位置で血流増加が生じることが観測された。これが太極拳特有のものであるのか、あるいはセンサを装着した上で動作しなければならないという課題設定に起因するものなのかは、まだわかっていないが、非常に興味深い現象である。
文献
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ブラジルは多民族国家であり、宗教もまた多様である。カソリックが多いが、西アフリカや先住民族の信仰と混交した宗教や、フランスから伝わったスピリティズムも盛んである。 本研究は、明治大学、ベゼッハ・ヂ・メネゼス大学との国際共同研究であり、2004年4月より、ブラジルの宗教的儀式やグループ活動のフィールドRNG測定を行っている。 宗教儀式や類似の精神的興奮を伴うグループ活動においては、参加者の精神的高揚や変性意識状態の発生が見られる。フィールドRNG測定は、儀式参加者の無意識的な精神物理作用(念力)が周囲に及ぼす影響を、小型の電子機器(物理乱数発生器:RNG)を使って計測する。 ウンバンダ、カンドンブレなど行事13件(26データ)を測定・解析した結果、RNGのZ2出力異常が高い頻度で発生したことがわかった(26データ中6データでZ2累積偏差が有意に偏差、p = 0.0015、直接確率、片側)。 また、都市中心部から遠く離れ、深夜で、かつ長時間にわたる行事ほど、RNGのZ出力異常が負方向に偏る(負の有意相関)という非常に興味深い結果が得られている。
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本研究は、ベゼッハ・ヂ・メネゼス大学(ブラジル)との国際共同研究であり、1980年代に中国で開発されたサイ能力誘発訓練のブラジル児童への応用可能性を探っている。 この誘発訓練は、丸めた紙片に書かれた文字・図形を標的とする自由応答型の透視能力の訓練であり、中国の雲南、北京、上海で盛んに実施され、優れた能力者の育成に成功したといわれている。アルファベット、数字に加えて、漢字・ひらがな・カタカナが使える日本人に比べ、ブラジル人の場合は、標的に使用できる文字の種類が限られており、その分だけ標的作成がむずかしい。 児童2回、成人1回の集団訓練から、標的の多様性は簡単な線画の多用によって、ある程度解決可能と考えられた。また、大人よりも子供の方が一致度の高い回答をする傾向があった。
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